そして残された私たちも、もう遅いし帰ることにした。
けど…。
「早瀬先輩、帰らないんですか…?」
早瀬先輩の側に来て、床に座っている先輩に手を差しのべる。
しかしペシッと私の手は振り払われてしまった。
「私に触らないで…」
「理香…こんなところにずっといたら一人になるよ?」
早瀬先輩を心配している黒木先輩も近づいて帰るように口で説得する。
「理香の父さんも母さんも、きっと今頃帰りが遅くて心配してる」
「…愁には関係ないじゃない。
とっととそこの幸せ能天気そうなみんなと帰れば…?」
「おい、お前…!」
先輩の言葉に腹がたったのか、紀田くんが身を乗りだした。
けどそれを止める黒木先輩。
そして…。
パシンッといい音倉庫中に響いた。
どうやら先輩が早瀬先輩の頬をはたいたらしい…。
それにビックリして目を見開いてみんな声も出せず、驚くだけしかなかった。
「なに…すんの…」
「甘えるのもいい加減にしろ!」
先輩の大声が響きわたる。
「理香はいつまでそんな意地を張ってるつもりだ!
俺も実梨も、お前のことを心配してるんだぞ!」
早瀬先輩に怒る黒木先輩は、すごく刹那そうだった。
「変なとこでいつも意地を張って!
ちょっとは素直になってみたらどうなんだ!」
先輩の両肩を掴んで叱る先輩に、早瀬先輩ははたかれた頬に手を添えながら、唇を小さく震えさせながら噛み締めていた。
「だって…。
私は普通の女の子とは違うもの!
私はご令嬢で、いつも貴高く美しくいなきゃいけない!
私みたいなのは、人に甘えちゃいけないのよ!
ホントの自分をさらけ出してはならない…。
例え好きな人だろうとね…。
そんな私は意地を張らないと、愁にずっと甘えそうだったのよ!
素直な自分を一度でも見せたら全てが壊れてしまいそうだったのよ…」



