先輩と後輩の恋愛事情




「桜井、無事か!?」




「実梨!」




笑い合っていたところに、紀田くんと佳が慌てて近づいて来た。




「良かった、無事みたいだな…」




「うん」




「実梨…血が…」




「あ、この頬の?
大丈夫だよ、こんなのただのかすり傷だから」




笑ってみたものの、意識すればするほどズキズキと痛みが押し寄せて来る。




「待ってろ、確かバンソーコ持ってたはず…」




ゴソゴソと紀田くんがポケットの中を探している時、不意に前からバンソーコを渡された。




「あっ…!」




渡してくれたのは紀田くん…ではなく、さっきまで倒れていたリーダーだった。



「よかったらそれ使いな。…おい、てめぇら帰んぞ!」




「うーす」




リーダーが声を上げると、疲れきったような低い声が周りで聞こえた。




「じゃぁな、黒木」




「あぁ、お前もちゃんと学校には出ろよ」




「…バーカ、出てるっつの!」




にっと笑ってリーダーは上着を片手にみんなと倉庫から出ていった。







残ったのは私たちと早瀬先輩と黒木集団のメンバー。



すると黒木集団のメンバーは私たちに向かって歩いて来た。




しかも笑顔で…。




「黒木さん、最後のキメ、かっこよかったっす!」




「紀田もかっこよかったな!」




「黒木さん、またうち(黒木集団)に戻ってきてくださいよ!」




「紀田も、良かったら」




キラキラとメンバーの目は期待で光っていた。




そんなメンバーを見た先輩は、グイッと片手で私の肩を引いて自分にくっつかせると




「悪ぃな。
俺はこいつが一番大切で、側で守ってやんねぇといけねぇから、そっちに戻ることはないわ」




笑顔で言った。





「せ、先輩…」




ヤバい、先輩にそう言われるとすごい嬉しい…。




浮かれちゃいそう…。




「俺も、桜井の側にいてぇから黒木団に戻ることはねぇ」




紀田くんも私の隣に立ち、私の頭に手を置きながら言った。




先輩が一瞬紀田くんを睨んだような気がしたけど…。



黒木集団のメンバーはシュンとしたように




「そうっすか…。
二人とも帰ってこないんっすね…」




元気がなくなってしまっていた。




そんなメンバーに




「けどお前らがずっと俺の仲間であることには変わりはねぇからな!」




笑顔で言う先輩がいた。




その言葉に、また輝きを取り戻し




「そうっすよね!」




「俺たち、ずっと仲間です!」




「また何かあったら呼んでください!」




と、みんな笑顔で帰って行った。