先輩は私が縛られていた縄を解いた後、早瀬先輩の手首を掴んだまま立ち上がった。




「さて…。
理香、持ってるそれ放してくれる?」




「いや…、いやっ…!」




「大丈夫、何もしないから…」




「いやっ…!
こっちに来ないで愁…」




「落ち着いて…。
ゆっくり力を抜いて…」




先輩は早瀬先輩の言葉を聞かずゆっくり近づいて行く。




そして…





優しく早瀬先輩を抱きしめた。




「…!」




「…愁…!?」




私も早瀬先輩もいきなりのことでびっくりする。




早瀬先輩はそのままカーンッとカッターを下に落とした。




「良かった。
ちゃんと放せたね」




先輩は早瀬先輩から体を離し、微笑んだ。




たぶん、今さっき先輩が早瀬先輩を抱いたのは落ち着かせて、カッターを手放させるため…。




けど…ちょっと妬ける…。



「愁…」




先輩は真剣な顔つきになるも、優しい声で早瀬先輩に聞いた。




「理香…聞いたよ。
実梨に嫌がらせしてたんだって?」




「……ごめんなさい」





早瀬先輩はその一言を言ってその場に崩れ落ちてしまった。




顔を両手で覆って泣いている。




そんな早瀬先輩に先輩は肩に手を置いて





「…もう実梨に手を出さないって約束してくれる?」



早瀬先輩を見つめて言った。





早瀬先輩は何も言わず、コクンと首を縦にふった。




これで…私はもう嫌がらせをされなくて済むのだろうか…?