ん、でも待てよ…。
この爽やかな声、どっかで聞いたことある…。
どこだったかな〜?
「ちょっと愁〜」
考えているところに、茶色い長い髪を揺らしながら、来る女の人がいた。
その人はそのまま先輩の腕にしがみつく。
「も〜、こんなところで何してるのよ〜!
早く中入ろ〜」
なんとも甘ったるいねこなで声。
こういう声を出す人はとうてい男の人の前でだけだ。
「あら、その子たち何?」
ほら、私たちに気づいたら素になる。
だからこういう人は嫌いだ。
少しキッと睨まれる。
「あぁ、ちょっとした知り合い」
先輩は軽く流した。
うでをくまれてても嫌がらないとなると、この人は先輩の彼女かな?
まだ睨まれる。
そんな睨まなくたって、別に先輩を取ったりなんてしないのに…。
「あ、これ俺の彼女の…」
「早瀬理香です」
睨んだまま自己紹介される。
「はぁ…」
軽く相づちはうっといたけど…。
いきなり紹介とかされても、別にどうでもいい…。
「あの…そろそろ中入ってもいいですか?」
今まで黙っていた佳が口を挟んだ。
「え、あ、ごめん!
そうだね、チャイムもそろそろなるし…」
その時、キーンコーンカーンコーンと世例のチャイムが鳴った。
「あっ…!」
「もう、愁がムダ話しばっかしてるから遅刻しちゃうでしょ!」
グイッと先輩の腕を引っ張る。
「ちょっ、理香そんなに引っ張んないでよ…」
「じゃぁ早く行こうよ〜!」
二人のやり取りを横で見つつ、私たちも
「急ご」
と言って走った。