「…こっち寄れ」
助手席のお前の肩を抱き寄せ…目を閉じ
オレは唇を重ねた…
遠くから聞こえてくる波の音が耳に優しい…
が……当然ながら
これはやはり違う…
これは明らかに違う
愛情のないキス…
オレはお前からの…
リクエストに答えただけ。
これはあんまりだろ…
酷だろ…
やべぇぞ…ますますお前を傷つけちまう…
重ねた唇をやがて離す…
「加奈枝…お前じゃない。
ごめんな…」
お前は頷く。
「な……ごめんな… 」
「お兄ちゃん…ありがとう…
私…吹っ切る…」
…ありがとう…?
「いずみさんと…
幸せに……」
幸せに…なんて
今のこのタイミングで…
改まって
お前からそう
言われたら…
今言われたら…切ない
複雑だ…
一人の女をこうして
傷つけた男だよ…
『おうょ!幸せになるぞ!!』とは
当然返せない。
でもコイツ
…お兄ちゃん…とオレをそう呼んだ加奈枝は
すでに気持ちの切り替えに進もうとしている。
交わす握手…
なんか今にもオレの方が泣き出しそうになりながら…出した右手。
力強く握りしめあった!!
和解の握手…
オレの頭に
いずみ…アイツの顔が
浮かんだね…



