そのうち、ひとりの人が中心になって質問し始めた。


 「体にはどこも異常は無かったのですか」
 「はい」

 「飛び下りる直前は、怖いと思いませんでしたか」
 「思いません」

 「飛び下りている間は、どんな感じでしたか」
 「あっという間、だったので」

 「網に受け止められた時は、どう思いましたか」
 「別に」


 「飛び降りる時に、『私は死神なんかじゃない。女狐だ。メッキーだ』と言いましたね。あれには、どんな意味があるのですか」


 「言いたくありません」

 「疲れていますので、もうこれ位で」


 その時、母親の緑が中に割って入った。


 「お母さん、一言だけ聞かせていただけませんか」

 「申し訳ございません。これで・・・」


 二人は報道陣を振り切ってタクシーに乗り込んだ。