葵は複雑な心境だった。

 結婚式が計算通り首尾よく運んだのは良かった。が、死神と姉パンツが本当に結婚するのは、許せないと思っていた。

 成績で差を付けられているのに、クラスで一番ハンサムな姉パンツを奪われる事に、葵は憤りを感じていた。


 保は結婚式の一部始終をデジカメで写真に撮っていた。


 ピンクのパンツをあんな形で見せ付けられた時には、穴があったら入りたいほど恥ずかしかった。が、保には不思議と怒りは無かった。

 むしろ、相手が雫である事を考えると、嬉しい気持ちさえあった。そして、保は雫のウエジングドレス姿を想像して、ポーと頬を赤く染めていた。

 
 雫は映画か舞台を見ているようで、腹が立つより、寸劇に大きな力で吸い寄せられていた。


 次はどうなるのか。

 次はどう展開するのか。

 
 葵たちの演出の凄さに、ここまでやるかと、むしろ雫は脱帽していた。
 写真を撮るのを忘れて、見とれる時さえあった。


 雫は吉岡君の事も気になった。


 時折、吉岡君を見る。
 吉岡君は、分からないように、左右に目配せしながら写真を撮っていた。


 雫はそんな吉岡君を素敵だと思った。そして、新郎役の石田君よりも、ずっと、ずっと、イケメンだと思った。