人ごみの中をぐいぐいと木内君が引っ張る。

強い男の子の力。



「木内君…?」

「…」

「…木内君‼」

ピタッと足が止まり、とまった木内君の体にぶつかった。

「…ご、ごめん」

「…」

「どうしたの木内君…」

周りの人は彼氏や家族、友達と楽しそうに笑っている。
その中で木内君の表情は違う。

悔しそうに、何かを思っている。


「花沢…」

「・・ん?」

やっと木内君が口を開いてくれた。

木内君の手があたしの手に触れる。
ドキドキとしてやまない。

「ごめんな」