たっちゃんに言われて前をみると、数学教師が教室の扉を開けようとしていた。
やばい。あたし数学の予習やったっけ?
私はがさごそと教科書とノートを引っ張り出した。ノートを見ると、予習は一昨日していた。
人間、綺麗事しか言わないんだよ。
たっちゃんの言葉が反復する。
そんなことない。ってすぐさま言いたい衝動に駆られた。
数学教師がこの前やった公式を反復している。
私は、考えていた。 綺麗事じゃない、自分のどろどろとした汚い、他人に見せれば軽蔑されてしまう、自分さえも見たくない部分。
人間、綺麗事しか言わないんだよ。
だって、中身はとても汚れが溜まっているから。
本能は言いたくないの。ただ綺麗でいたいだけ。
汚れた私を好きになってくれる人は誰もいないから。
数学教師が前の公式を使った演習問題を解いていく。
私は隣のページの新しい公式を暗記する。

