アルライカは三人相手にしても全く動じず、あっという間に三人の剣を叩き落す。
「つ、強い……」
 信じられないように、イルレオンとアルギルスが呟く。
 イルグレンは前にも経験しているが、やはり面白くない。
「ライカ。稽古にならん、少しは長引かせろ」
 そういわれて、ぽりぽりと頭をかく。
「面倒だな。じゃあ、もう一度かかって来い」
 気を引き締めて、もう一度イルグレンが向かっていく。残りの二人も皇子に遅れて隙をつこうと両脇に回り込む。
 今度はアルライカが傍目に見てもわかるほど手加減したので、ある程度稽古としては長引いた。
 しかし、三人が汗だくで息も絶え絶えになっているというのに、アルライカは全く疲れた様子も見せていない。
「よし、次来い」
 残りの三人が最初の三人と交代する。
 息を整えながらも、今度はアルライカの動きを観察する。
 相変わらず惚れ惚れするほどの戦いぶりだ。
 三人は決して弱いわけではないのに、アルライカにかかると赤子の手をひねるように簡単に翻弄されてしまう。
 戦士としての見事な戦いぶりに、改めて強くなりたいと思わせる。
「よし、最後は俺とだ。五人まとめてかかってこい」
 残りの三人が動けなくなる前に、ソイエライアが立ち上がる。
 イルグレンを除く五人が剣を構える。
「グレン、よく見とけ。お前の体つきじゃ、俺よりもソイエの戦い方のほうが合ってる」
「わかった」
 先ほどのアルライカのように、ソイエライアも強かった。
 五人を同時に相手にしても、全く隙がない。
 後ろに目がついているかのように的確に動きを捉え、剣先を触れさせることすらない。
 何より、動きが速すぎる。
 多分ソイエライアが本気を出したら、あっという間にこの稽古も終わっているに違いない。
 わざと長引かせるために、剣以外の手技や足技は使わない。
 師としても上出来だ。
 アウレシアの戦い方とも共通する優雅な動きを、イルグレンは食い入るように見つめた。