そして次の日。
 馬車での移動が予定通り終わると、今度はソイエライアとともに、イルグレンとアウレシアはその場を離れた。
 小さな森が点在するように木々が群生している間を抜けて、大きな森の手前の開けた場所まで来た。
「ここでいいな」
 ソイエライアが言って、剣を抜く。
「グレン、来い。レシア、昨日みたいに二人がかりは今日はなしだ」
「何でだよ」
「今日は稽古が目的じゃないからだ。俺達が戦ってる間に気配を探ってろ」
「わかった」
 イルグレンが剣を抜く。
 仕掛けたのは、イルグレンからだった。
 あわや斬られるぎりぎりのところで、ソイエライアは剣を弾き返した。
「――!!」
「遅いな。もっと速く」
 ほとんど動かずに、そう言った。
 もう一度向かっていく。
 今度はソイエライアが先に懐に入る。
 左肘が脇腹に入る寸前で、今度はイルグレンが避けた。
 身体をかわしざまに剣を横になぎ払うが、これも剣で止められる。
 ソイエライアも強かった。
 アルライカと違って、すらりとした体躯なのに、弱さは微塵もなかった。
 アウレシアのように力を流すのではなく、間合いをわざとずらす。
 剣が当たるだろう時機をずらすことで、相手の力を殺《そ》ぎ、力の重心を狂わせる。
 戦いづらい相手だった。
 無駄な動きも隙もなく、どこに打ち込んでも確実にかわされるか、返される。
 また、剣だけでなく、隙を見て格闘めいた攻撃を仕掛けるため、あらゆる所に気を配らねばならなかった。
 しかし、アルライカのように、すぐに勝負をつけたりはしなかった。
 戦い方を教えるように、ソイエライアは剣を揮った。
 だから、ソイエライアが仕掛けてきたときは、イルグレンもソイエライアのように間合いをずらしながら、戦い方を真似てみた。
 その内、こつを掴むと面白くなってきた。

「よし、今日はここまでだ」

 ソイエライアが言う頃には、息が上がっていたが、何だか物足りないようにも思った。