宵闇に紛れ
     音もなく来たり

 神々は集い
     高らかに 詠う

 夜明けを求め
     暫し やすまう

 その地こそ
     約束の 大地

 ああ そは
     暁《あかつき》の 皇国《おうこく》


 神々が最初にこの地に降り給うたその瞬間に夜明けが生まれたと、古代史の冒頭は語る。
 東の果ての、太陽が一番初めに昇る国。
 暁の紫が世界で一番美しい国。
 暗闇の世界に夜明けが初めて来たその地こそは、前面に水平線を臨み、背面に険しい山脈を頂く〈暁の皇国〉と名高いラウ・フラウメア皇国である。

 だが。

 その日。
 暁の皇国に夜明けは来なかった。

 全てを焦がす紅蓮の炎と立ち上る黒煙が、たった一度だけ、その国から夜明けを消し去った。