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長い眠りにつく前、面白いヤツに会った。
森の中で一人暮らす女は、周りから魔女と言われはみ出し者になていた。ケガをしてたとはいえ、男のオレを介抱し、家に泊まらせる時点でおかしなやつとは思ったけど、まさか魔女とはね。
って言っても、あきらかにそいつはただの人間。違うことといえば、薬に長けているってことぐらい。
まだ発症してなかったが、そいつから漂う香りは好ましかった。
こいつが飲んでる薬のせいか。
発症しようとしているからか。
ただの人間相手に、よく訪ねるようになってた。
寝ている時間に家に入っていようが、そいつは顔色一つ変えない。またいるの? の一言で済ませるんだから、結構度胸ある女だよ、ホント。
もっと――知りたい。
いつからそんなことを思うようになったのか。そいつに近付くことが多くなった。眠っている時なんか頬に触れ、温もりを感じたくなったり――どうやら、興味を持ち始めたらしい。
近付いてはダメだとわかるのに、制することができない。これ以上近付けば、コイツだって巻き込まれる可能性がある。だから、それを言えば拒絶する。そうすればオレも自身を律するっことができると思った。
『なら、血を飲んだ瞬間に死ぬぐらいの毒を飲んでおくわ』
軽く、そんなことを言ってのけた。
ホントにそれが現実になるかもしれないと強く言っても、いつもと変わらない。期待したような、拒絶の言葉も反応もされなかった。
――それで核心した。
オレは本気で、コイツと関わってみたいんだと。
『もしそれで死んだら、次はあなたに護ってもらうわ』
『次って……死んだ人間をどう護れって言うんだ?』
『生まれ変わりってあると思うの。だから、次は簡単に死なせないよう、頑張って私を護ってね』
『……これから死ぬこと前提かよ』
『あなたよりは確実に先だと思うけど?』
『そんなこと、オレだってわからねぇーよ』
『ならその時は、私があなたを護ってあげる』
凛とした強さを秘めた存在。
女としてだけじゃない。
そいつの生き方、存在すべてに――オレは、完全に魅了された。



