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「なんで――お前らが手出しする」



 血溜まりの中、雅は踏み付けているモノに問う。

「血の回収はお前らで、命華はオレの担当――なんとか言え!」

 足に力を入れ、ぐちゃっ、と血飛沫(ちしぶき)がはねる。苦悶の声をもらしながら、そのモノはゆっくり、言葉を発していく。

「ハヤッ、ク、、、メイカ、ヲ……」



 ――ぐぎゃっ。



「ナイショで動くのは気にくわない」



 ――ぶぎゃっ。



「だから――お前らは糧になれ」



 思いきり、足の下にいるモノを踏みつけた。返り血が顔にかかるも、気にすることなく、周りにいるであろうモノたちに言う。



「覚えておきな。オレより先に手出ししたら――これだよ?」



 口元の血を舐めとり笑うと、周りのモノに、血の回収を指示する。

「できるだけ女。若いのはイイけど、子どもはダメ」

 小さく、獣のような低い唸り声が答える。
 それを確認すると、雅はその場を後にした。

 ◇◆◇◆◇



「―――目が覚めましたか?」



 声の方を振り向けば、そこには白いYシャツにスーツのズボンを履いた男性が。一瞬知らない人かと身を硬くしたものの、それが先生だとわかった途端、一気に緊張が解れた。

「気分はどうですか? うなされていたようですが……」

「……ちょっと、よくないです」

 そう言うと、先生は私の額に手を当てる。熱がないことを確認すると、安心したのか、安堵の表情を浮かべた。

「実は昨夜、怪しい気配が近付いていたので、寝ている間に、私の自宅に移動させてもらいました」

 すみません、と先生は謝罪する。

「体は、まだ痛みますか?」

「はい……痛い、です」

 起き上がれそうもないので、横たわったまま先生に言う。

「話すのも、無理はしないで下さい。――少し、話を聞いてもらっても構いませんか?」

 雰囲気から、大事な話なのかと察した私は、頷いてそれに答えた。

「ありがとうございます。石碑での時は時間がありませんでしたので、続きをと思いまして」

 詳しい話が聞ける。そう思ったら、私の手は自然と、シーツを握りしめていた。

「キョーヤから多少は聞いたかもしれませんが、まずは、私たちについて説明しますね。王華と雑華、これは元々、【カルム】と呼ばれる一つの種族でした。ですが、カルムの中で呪いを持つ者が現れてしまい、それから種族は、二つに分かれたと言われています。
 ちなみに、私はカルムの中でも始祖――古い血筋の、二つの種族の祖にあたります。幸い、感染は無いまま、ここまでこれています」

「王華と雑華は……どう、違うんですか?」

「血を吸わなければ生きれない、という点では、どちらも大差はありません。ただ、雑華の方が、呪いの進行が早いようですね」

 どちらも変わらないなら、どうしてわざわざ、分れる必要があるんだろう――?どちらも呪いがあるなら、協力して道を探ればいいと思うんだけど。

「何か、疑問がありますか?」

 気になることは聞いて下さいと言う先生に、私はゆっくり疑問を口にした。すると先生は、それは出来ないことなのですよ、と悲しげに言う。

「確かに、呪いがあるのは基本的には同じですが――元々、王華は純血を重んじる者たちの集まり。対して雑華は、人や他の種族と子を成していました。それが王華から見ると、とても不快なものだったようです」

「元は同じなのに……酷い」

「えぇ、全くです。ただ、産まれながらの雑華もいます。感染しても発症を抑えられれば、ある程度は普通に生活が出来きますから。とは言っても、寿命は平均より低いですけどね。一応、子供を産むことも可能です。その場合、その子は産まれながらに雑華ということになります」

「治療する方法は……無いんですか?」

「……今のところは。ですが」

 先生は私を見つめ、真剣な表情をする。
 なにがあるのかと思っていると、重々しく、その口を開いた。