この間にも、ヴァイオリンの音は途切れはしなかった。

作り出した大きな音は、彼に届きはしなかったのだ。

拒絶されていると――思うしかないのだろう。

彼はすべてを締め出している。

弾いている彼の意識は、はるかに遠い場所にある。

自分の空想ごっこなどとは違い、この世を否定することが、そのまま作られる壁の厚みにとなるようだ。


 私は、否定された側に立っているのだわ。


 考えると足に伝わる。

頭を切り替えなくてはいけない。

決めたのだから、迷ってはいけない。

けれど生まれてくる迷う気持ちを、シェリーは持て余してしまっていた。

自分が関わることがさらなる悪化をもたらすという可能性は、どれほどのものだろう。

ピーターの支援を思い、この迷いが信頼を裏切ってしまったようで唇を噛む。


 足に感じる柔らかな絨毯は、最近新しく張られたものだ。

階段の端と中央とに、減り具合の差が出ていない。

足音を殺すための努力は、しないことにした。

どうせ、あの人は聞いていないのだから。