「そんな声震わせて何言ってんだ。こんな夜中に女が暗い道にいんのに置いてけるか。」

この男には通用しないらしい。

「あたし帰る。」

そう言って立ち上がった。

「待てよ。」

男があたしの腕をつかんで引き留める。

「なに。」

「お前名前は?」

「…加神優季」

「優季か…」

あたしは男の手を振り払って闇の中に消えて行った。