奈央だけを視界にとらえ、俺は真っ直ぐに歩き出した。 歩き出した俺は、意外にも冷静で…自分の格好がなんて場違いなんだろうなんて思ったり。 『‥すみません!』 俺は奈央たちが座るテーブルまであと10メートルってところで、声を張り上げた。 話に夢中になっていて俺の存在に気づかなかったのか、奈央の母親と見られる女性と相手側の両親はびっくりしたように俺を見つめる。 ───…俺も、びっくりだ。 奈央の向かい側に座る見合い相手の男は、忘れはしない…あの金髪の先輩だったのだから。 「…あなた、誰?」