もうもうと考えを巡らしているうちに、タクシーはホテルのまばゆいエントランスに到着した。 ───‥エントランスの奥まったところ。 柱やプランターの植木に隠れるようにして、ひとつの背中が見えた。 「…あ!」 ぼさぼさの男が声をあげたのを聞き、すぐさまその背中に駆け寄る。 黒のドレスは、明らかにその存在感を放っていた。 俺みたいな一般庶民が着るようなモノじゃないって… わかったのに。