便利屋




「ねえ、奈央ちゃんだっけ?」


「あ…、はい。」


奈央の声は、心なしかか細く、弱々しい。

俺が、俺がしっかりしなきゃと思ううちに、先輩が早速仕掛けてきた。



「奈央ちゃん、そんなヤツやめて…俺にしとかない?」


ふわっとなびく先輩の金に近い髪が、異様に気持ち悪かった。


俺は──‥、完全に言葉を失った。

この金髪を前に、どうしていいかわからなくなった。


『…ふざけたこと、言わないでください。奈央は俺の、です。』


ありふれた言葉しか、言えなかった。


俺を一瞥した先輩は、冷たい言葉を被せた。


「それは…奈央ちゃんが決めることじゃないの?」



───‥そうか…そうだった。


奈央がコイツを受け入れたいなら、受け入れさせてあげなければならないんだった。