「…わたしっ……」
ぎゅう〜っと次第に強さを増して抱き締めてくる奈央に、俺のなかのナニカがぷつんっ‥と切れた。
ぐんっと無理矢理に奈央を立ち上がらせると、俺は奈央を書斎から連れ去った。
「広人ッ…!?」
驚く奈央の声と、父さんの俺を呼び止める声がした。
「待って…広人…!」
書斎を出た俺は奈央の小さな叫びをことごとく無視し、廊下を歩いた。
そして近くにあった大きなガラス張りのドアから、外へと出た。
出た先には、緑が溢れていた。
中庭だろうか。
丁寧に整備された庭には生き生きと枝を伸ばし葉をつけた木々が、庭をひとつの芸術作品かと思わされるように整然と立っていた。
なかでもひときわ存在感を放つ大木の下で、俺は足を止めた。
「ねえ…?」
遠慮がちに尋ねてくる奈央の顔には、涙のあとが残っている。
まだ、目のはしに涙をためたまんまだ。
「広人…」
はあーっと深いため息を吐き出して、崩れ落ちるように幹に寄りかかって座った。
奈央の手は繋いだままだったから…奈央も自然と座るかたちになった。

