「…なあ、秀人。」
隆司さんが重たそうに、口を開いた。
「ひとつだけ…うまくいかないことがあるんだ。」
「うまくいかないこと…?」
「ああ。」
「なんだ、それ…?」
隆司さんは一度、奈央の顔を見てから、その口を再び開いた。
「この部屋を見て、わかってくれないか?」
奈央はぎゅうっと俺の手を握ってきた。
話の主導権が俺にない時点で、今の状況をどうするにもできないが…俺は、奈央の手を強く握り返した。
さっきは───‥
俺のほうが奈央の手にあたためられた。
家族に関して…奈央にも不安に思うことがあるなら、俺と一緒だ。
不安を、消してあげたい。
家族のことは、その家族にしかわからないことだらけだと思う。
だけどその家族の外で、支えてあげる人がいなければ…だめなんだと思う。
家族だけで解決してくには、つらすぎることだってあるんだ。
複雑な家族関係なら、尚更。

