『でも───‥父さんは帰ってこなかった。』
幼いながらも俺はあのとき、絶望を味わったんだ。
「広人…すまない。あのとき父さんがきちんと帰っていれば───‥過去を悔やむよ。自分が憎い、な。」
あのとき、父さんが帰ってきてたら───‥?
『…いや、俺は父さんを憎んだりなんかしない。』
「広人───‥?」
だって─────‥
『あのとき‥父さんが帰ってきてたら、俺は奈央と出会えなかったから。』
「え…?」
当然出た自分の名前に、奈央は仰天の顔を俺に向けた。
『あの日…俺は父さんに会えなかったけど、奈央と出会えたんだ。』
無我夢中で現実から逃げ、たどり着いた公園で。
『奈央、覚えてるか‥?公園の、ブランコで───‥俺に君もパパがいなくなっちゃったのかって、聞いてきただろう?』
「奈央…」
菜々子さんが震える声で、奈央の名を口にした。
『いっぱい走っていっぱい歩いたら家帰れなくなったってゆってきた女の子を、家まで送り届けたの───‥俺だったりする。』

