左隣にくっついて座る奈央が、俺の左腕をぎゅうっと握った。
奈央も、気づいたんだろう。
依頼人の正体に。
「あれから、…長い月日が経っちゃったなあ。」
「…ああ。秀人…」
「…わかっている。」
隆史さんと…父さんであろう依頼人のあいだには何やら通ずるものがあった。
静かな沈黙が訪れる。
騒がしいのは、…俺の心音だけだろう。
どっくん、どっくんと奈央に対するものとは種類の違う発作が起きる。
俺は、大きめに息を吸い込んだ。
チャンスを逃したくはなかった。
『あの…』
緊張が掠れた声しか出すことを許さなかった。
それでも、俺は押し切る。
『あの…!依頼人さんって…』
依頼人の目が俺をとらえる。
その瞳はあたたかくも、つめたくもなく───‥。
これから俺が切り出そうしているyes/no問題の答えなんて、どちらか全くわからない。
でも、それでも───‥
心がなにかを感じる。
『依頼人さん…僕の、父さんですよね…?』
振り絞って出した声は5歳児のように、か細く弱々しい声だった。
「…違う。」

