半ば無理矢理にそう己に言い聞かせ、奈央は自分の家で不安げに依頼人のあとを追う。
俺もまた奈央に続いた。
「わたし、おばあちゃんの書斎って…あんまり行ったことないんだ。」
そう言うとちらりと俺の顔色を伺う。
俺が聞きたいことを察して、さらに言葉を続ける。
「…お母さんに行くなって、言われててさ。」
どうして行っちゃいけないのか、わかんないんだけどねと笑った奈央の顔は悲しげだった。
屋敷を奥へ奥へと進み、廊下にこだますは外から漏れる小鳥の囀り。
そんな閑静な部屋の並びの一番奥にひときわ大きな扉がある。
扉にはどこから溢れ出ているのか、威厳のある雰囲気が漂っていた。
その扉の前でふと立ち止まり、今まで一度も振り返らなかった依頼人が俺たちを見た。
「…ここが、書斎だよね?」
「…あ、はい。たぶん。」
唐突な質問に、奈央は答えに一息遅れた。
「じゃあ…」
一呼吸置いて、依頼人が重苦しい扉を開いた。

