「素敵な、彼女だね。」
男性の口調に、俺はひどく動揺した。
胸の奥が、ずんっとした。
何かが、疼く。
儚い、何かが───‥。
やがて、俺たちを乗せたタクシーは、見慣れた街並みへと入っていった。
俺たちの街だ。
俺たちが住む、街。
『お家はこの辺なんですか?』
俺の質問に、男性は優しく微笑むだけだった。
どうしてか、不快感はない。
普通の俺だったったら、なんだよって解決しない疑問に多少イラついただろう。
決して、言葉にしなくとも。
だけど今日の俺はきっと…普通じゃない。
どこかが、異なるんだ。
なにかを…間違えている気がして、仕方ない。
「…あれ?」
タクシーの運転手さんと話していた奈央が、驚いて声をあげた。
『……奈央…?』
「あれえ?…ここ、……うちんちだよね…?」

