『……名前…?』
なんのことだか、さっぱりわからなかった。
だけど、最近の奈央が俺の名前を呼ばないことに関係しているってのは確かだろう。
すうっと、奈央が息を吸い込む音が聞こえた。
「…私が今見てるあなたは、あなたであってあなたじゃないの。」
声を挟もうとしたが、やめた。
奈央の真っ直ぐな瞳に、従うことにした。
「あなたはあなただけど、私が見てるあなたは…仮でしかないんだよ。私のなかでは…私が、彼氏役を頼んだ延長上に…あなたは、いるの。」
奈央が俺の手を握ってきた。
「私は、蓮が好きだった…」
───“蓮”。
奈央に、久しぶりに名前を呼ばれた。
でも、「好きだった」って…過去形なことがひっかかった。

