幼い俺たちは、名前を名乗ることもなく、ただただ自分たちが置かれた状況だけを口にしていた。
現実だと、自分を諭すために。
「…ねぇ、おうち帰らなくてだいじょうぶなの?」
『…おうち?』
「おばあちゃん、しんぱいしてるでしょ?」
華おばあちゃんのことは、あたかも自分のおばあちゃんのように話した。
『…うん。…君は…?』
「…あたし?」
『うん。帰らなくてだいじょうぶ…?』
女の子は困ったように顔をしかめた。
「…おうち、わかんなくなっちゃった…。」
『…え?』
「いっぱいはしって、いっぱいあるいたら…わかんなくなっちゃったの。」
俺は女の子の手をひいて立ち上がった。
「………?」
『いっしょに、いっしょにおうちさがさなきゃ。』
俺の心に便利屋としての責任感が宿ったのは、このときだったのかもしれない。

