『…でも…、』
「…なんだい…?」
聞いてはいけないことなのかもしれない。
華おばあちゃんを困らせてしまうかもしれない。
でも、俺の心は…家族ってものに対しては飢えていて、5歳のガキのまんまなんだ───‥。
『…なんで…父さんは、俺を置いていなくなっちゃったんですか…?』
あの日のことが、悲しいくらい色鮮やかにフラッシュバックする。
いつものように仕事に向かう父さん。
俺も、いつものように父さんの背中を見送る。
「いってきます」って言う父さんに、「いってらっしゃい」と言葉を返せば…父さんの大きな手のひらが俺の頭に降ってきて──‥わしゃわしゃと頭を撫でてくれた。
とてもあったかい手で、俺はこの瞬間に見境ない愛情と安心を感じ、大好きだった。
でも、あの日は違ったんだ。
「いってきます」、「いってらっしゃい」の駆け引きはなんとも普通だった。
だけど、父さんの大きな手のひらが、俺の頭に降ってくることはなかった。
いかにも急いでいるようなようすで、玄関から足早に出ていってしまった。
閉じていく玄関の隙間から、見えたものが───‥
──────…金髪の頭。

