奈央はあからさまに目をそらし、視線を雑誌に戻した。
あの日から、奈央は俺の名前を呼ばない。
あの日───‥
ホテルを飛び出した俺たちは、タクシーで俺の家であるアパートまで戻った。
タクシーのなかでぼさぼさの男…奈央の父親に電話を入れ、俺の家で落ち合わせる約束をしたのだ。
だけど…いざアパートについてみれば、俺の目の前に立ち憚る人がひとり。
「…おばあちゃん…?」
奈央が震える声を出した。
そう、目の前に立ち憚ったのは…
『…華おばあちゃん。』
ここから全ての…俺たちの過去が色を取り戻そうと、記憶が呼び起こされていく───‥

