ふっ、と眠りから覚めた花音は、ぼんやりする眼を擦りつつ、もそもそと起き上がった。

「ん……あれ、お部屋じゃない……」

ぼうっとした頭で視線を巡らせれば、両隣には寝袋に包まって眠る兄たちの姿がある。

「おにいちゃん……」

あれ、どうして一緒に眠ったんだっけ? と考えること数秒。

「りんかんがっこう……だったねぇ……」

半分寝惚けながらやっと今の状況を理解したところで、また横になろうと寝袋を掴む。

しかし、そこでふと気づいた。

枕元に置いておいたはずの相棒、巨大ウサギぬいぐるみ五所川原がいないことに。

「……あれ?」

こてん、と首を傾げつつ、暗いテントの中を見回す。

「ごしょがわらくーん」

ぺら、と拓斗の寝袋の中を覗いてみる。

「どこにいったのー?」

ぺら、と和音の寝袋も覗いてみる。

だが当然ながら、そんなところに五所川原の姿はない。

「五所川原君……?」

だんだんと頭が冴えてきた。

大切な相棒がいない。そのことに花音は慌て、背負ってきたリュックや和音の『レディ・ブラント』のケース、兄たちの寝袋の下も覗いてみた。けれど、やはりいない。