「佐伯の雪女に会っただとおぉおぉおー!?」

天神地区を見下ろす山の頂にある鴉御殿──真っ黒な外壁の城──に、烏丸一族の長である鴉丸孔雀パパの怒声が響き渡った。

「あの学校は人外だらけなんだよ。雪女くらいフツーにいんだろ」

しれっと答える鷹雅だが、内心ガクブルである。

見た目は可憐、力も弱そう……いや、絶対に弱い。

純血の鴉天狗たる鷹雅に比べたら、その差は歴然としているはずだ。

しかしどういうわけか、あの冷気をまとった妖気に触れるだけで畏れを抱いてしまう。

バラバラと大事な黒髪が抜け落ちてしまうビジョンが明確に見えてしまう。

今日一日だけで大事な髪が百本くらい抜けてしまったような気がする。いや、大抵の人は普通にそのくらいは抜けるのだけれども。

「あの娘か? それとも、その娘あたりかっ!?」

雪菜たちが結界の中で長い間眠っていたことを知らない孔雀パパは、震えながら鷹雅に詰め寄った。