小粋に不気味な歌を歌いながら、闇の中で七色のスポットライトを浴びた箱、鈴木さん。

彼はビシッとサタデーナイトフィーバーのポーズを決めると、上に上げた手をスッと花音へと向けた。

「さぁ花音さん、12ページを訳してください」

「分かったぴょん」

凛々しい顔をしたウサギのぬいぐるみ、五所川原の腕をぴょこぴょこ動かしながら席を立つ花音。

(大丈夫、昨日お兄ちゃんと一緒に予習してきたんだから)

英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語ペラペラな兄、和音という強い味方のいる花音は、ふんっと鼻を鳴らして教科書を手に取った。

「……あれ?」

しかし、花音は大きな黒目をパチパチさせながら立ち尽くす。

「どうしました、花音さん」

鈴木さんが愛媛みかんの箱を揺らしながら近づいてくる。

「ちょ、ちょっと待つんだぴょん」

動きが滑らか過ぎて怖い鈴木さんを制するべく、五所川原の腕をぴょこぴょこ動かし、それからまた教科書に目を落とす。