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夕食後の橘邸。

長兄、和音はリビングにあるビロードの赤いソファに座っていた。

長い足を組みながら座るその顔は、憂いに満ちている。

「和音様……」

そんな主人を見つめる執事西坂もまた、強面の顔を苦渋に満ち溢れさせ、更に恐ろしい顔になっている。

「ふふ、心配ないよ、西坂。ただ、寂しいのさ……」

ふっと零す笑みもまた、憂色を含んでいる。

「2人とも成長したというだけのことさ。僕に隠し事が出来るくらいに……」

小さな頃は、学校から帰るたびに今日一日の出来事を競うように話してくれた弟と妹が。

今日はどうしたわけか、一言も口を聞いてくれなかった。

拓斗は疲労感たっぷりの面持ちで、声をかければ何故か顔を真っ赤にして自室に閉じこもってしまった。

花音もまた、オロオロと困ったような顔で、何も話してはくれない。

思春期の兄弟だ。

秘密のひとつやふたつ、あっても何ら不思議ではないのだけれど。

ちょっぴり寂しいお兄ちゃんなのであった。










あの後何があったのかは、書くまでもないでしょう(笑)