オノマトペ

「頑張ったね」

「へへ、ありがと」

礼を言う勇者に、姫はこくりと頷く。

「はぁ~……でもかっこ悪いよなー。俺、リディルの勇者なのに。誰にも負けないくらい鍛錬して、強くなったつもりだったけど……まだまだ上はいるもんだな」

振り返り、先程まで激闘が繰り広げられていたリングを見やる。

紅に染まっていたそこは、今は静かな黄昏色に包まれている。

「翡翠先生とやってみて、俺はいつも誰かに助けてもらいながら戦ってたんだなぁって……実感したよ。俺ひとりの力なんて、大したことないんだなぁって」

「……そうでもないよ」

リディルは言う。

「フェイに救われた人は、たくさん、いるもの」

リディルの言葉に、フェイレイは首を傾げながら瞬きをする。

「みんながフェイに力を貸してくれる……それは間違いなくあなたの強さだよ。みんながあなたを信頼して、力を渡してくれた。それにあなたはきちんと応えた。そうやってあの危機を乗り越えたの。それはフェイだから出来たことなの。誰にも真似できない、凄いことだよ」