オノマトペ

先生や生徒たち、学園OB、OGたちが満足げな笑みを浮かべながら会場を後にする。

その人波を横切り、赤髪の勇者は特設リング観覧席で待っていたハニーブラウンの髪の少女の元へ歩み寄った。

その顔には、苦笑が浮かんでいる。

「負けちゃった」

へへ、と軽く笑いながら、フェイレイは頭を掻く。

「うん」

そんな彼に、リディルはいつも通りに、無表情に小さく頷いた。そうして斬られた胸元に目をやる。

「怪我は?」

「大丈夫だよ。さっきリディルが癒しの力飛ばしてくれたから。ダメージも残ってないよ」

「そう」

リディルは頷きながらそっと彼の赤い髪に手を伸ばした。

痛いとか辛いとか、そういうことは絶対に言わないのだ、この勇者は。

いくら傷は塞いだとはいえ、閻魔と渾名される剣豪から受けたダメージは、こんなに短期間で癒えるものではないはずなのに。

全部笑顔でなかったことにして、周りを安心させようとする。心配をかけまいとする。

それが解っているから、リディルはただ、彼の赤い髪をそっと撫でてやった。