六月も半ばを過ぎた。

梅雨真っ只中のこの時期は、天候が安定しない。

登校時に晴れていたからと言って、帰りも晴れているとは限らないのだ。


「あ、雨だぁ」

帰ろうとして廊下を歩いていた花音は、鉛色の空からぽつぽつと雨が降り出したことに気づいた。

それは昇降口に着く頃には土砂降りへと変わり、帰宅する生徒たちは皆、傘を広げて昇降口を出て行った。

それを見送るように佇む黒い影がある。

「あれぇ、鷹雅くんだ……」

「ああ、花音か」

黒っぽい山伏の格好をした鴉丸鷹雅は、無表情に花音を振り返った。

「鷹雅くん、帰らないぴょん？」

五所川原の影に隠れながら、巨大ウサギぬいぐるみの腕を動かす。

「土砂降りだからな。どうするか考えてた」

と、鷹雅は雨に煙る灰色の空を見上げた。