◇最近何か物足りないような気がする…。



クリスは店の地下にある武器庫で武器の手入れをしながら、ふとそんな事を考えていた。



『…請求書…違うな…。報告書は…いや、書いたし…』



よくわからない喪失感に似た感覚に首を捻る。



『…クリス?』



『っ⁉︎』



突然聞こえた声にクリスは素早く銃を構えた。




が、両手を挙げて苦笑している銀髪に『なんだ、右京か』と銃を下ろす。




『珍しく注意力散漫だな…どうした?』



『…いや、別に…』



『うそつけ。別にって顔じゃないぜ?』



そう指摘され一瞬ジッと右京を睨んでから、観念したように溜息をついた。



『最近何か忘れてるような気がしてな…思い出せなくて嫌な感じがするんだよ。』



『ほう…ハンターの仕事はちゃんとこなしてるみたいだけどな…』



『ああ、仕事に手は抜かない主義だ。じゃなくて、日々の中で何かが足りないような…』



そんな彼の言葉に右京はふーんと気のないような相槌を打つと、『そんな事より…』と武器庫を見回す。



『扱いやすい武器ない?銃以外で。』



『お前の場合、スタンガンなんて必要無さそうだしな…刀かナックル辺りが妥当だろ。』



クリスは棚にある黒い箱を取り出すと、布に包まれたナックルダスターを手渡した。



『例の騎士修道会の要請か?』




『ああ、オルレアンに。…意外と重いな…』




装着して軽く拳を振る彼を見ながら、クリスは騎士修道会からの要請内容を思い出していた。