『もし、この事件が“人ではない何か”の仕業だとしたら、それは果して何なのか。』



『…悪魔…?』



『その可能性もある。だが、それなら別にオルレアンじゃなくても良かったはずだ。』



『それはそうだけど…じゃあ神とでも?』



『おいおい…悪魔じゃないなら神とか、安直過ぎだろ…』




やれやれとロイは頭を振った。



『まず、オルレアンの噂は何故あんなに有名になったのか。これには色々な説があるが、クリスの話じゃ騎士修道会は“人の仕業ではない”と睨んでるらしい。』



そもそもヨーロッパ地方は世界的に見ても数多くの神話が残されている。



かの有名なジャンヌ・ダルクですら、神のお告げを聞いたなどという逸話が残されているくらいだ。



オルレアンの噂が単なる誘拐事件でないとしても不思議ではないのかもしれない。



神ではない、悪魔でもないとするとあとは…



考え込むシンディに向かってロイはPCの画面に一枚の画像を表示させた。



豊かな緑を茂らせた大樹の絵画だった。



よく見るとそのがっしりとした大樹の上に大地が広がり、そこからまた幾つかの幹が伸びている。



『これは…ユグドラシル?』



『さすがシンディ。正解だ。ユグドラシル…世界樹と呼ばれるものでこの辺りではそれに因んだ神話が多い。』



神話におけるユグドラシルは9つの世界が存在し、3つの層に分けらていると言われている。



それによれば自分達の居る世界は第ニ層にあたるらしい。



『ユグドラシルの第ニ層には人間界の他に妖精界も存在しているって話だ。』



『じゃあ、ジャンヌが聞いた“声”は神ではなくて妖精って事?』



『それをこれから調べに行くのさ。』



ロイはそう言って自信ありげにニヤリと笑った。