その翌日、彼女は激しく後悔する…何故あの時、アランの話を断らなかったのか。



というのもP2から派遣された“彼”がいつもオペレーターのロイだったのもその理由があるである。



『いやー、一度来てみたかったんだよねー!フランス!』



『…なんでアンタが…?』



『丁度暇だったからじゃないか?』




よく考えれば、もしクリスなら自分がバックアップをする必要なんてないのだ。



騎士修道会と聞いて勝手にクリスと思い込んでしまった自分が情けない。



『…で?例の神隠しについてはどこまで分かってるの?』



『ああ、ここ半年で約20件の失踪事件が発生してるが、どの事件も手掛かり皆無で警察はお手上げ状態。共通点と言えばこのオルレアンで消息を絶った事くらいだ。』



そう言って彼はタブレットPCを軽く叩いて彼女に見せた。



失踪者のデータからはロイの言う通り性別や年齢、職業や出身地に至るまで共通する点がほぼ無いに等しい。



『…これじゃあ、なんの手掛かりにもならないわね…』



『そうでもないさ。これを見て気付かないか?』



『…どういうこと?何も共通点すらないようにしか見えないけど…』



『それだよ。共通点が無さ過ぎるんだ。逆に不自然だろ?』



本来この手の事件の場合、犯人が居るとすれば何らかの共通点が存在するはずだ。



だが今回はそれが見当たらない。



それは明らかに不自然で普通ならお蔵入りになってもおかしくない事件と言える。



ロイは『これは仮説なんだが…』と少し身を乗り出しシンディを正面から見据えた。