翌日、朝早くからスケジュールを確認する。


なんとか午後1時くらいには仕事が終わりそうだ。



だが、いざ蓋を開けてみると問題が色々とあり、イギリスの事務所へフランスの製糸工場での状況を説明せざるを得なくなった。



結局午後はホテルで電話による打合せでも3時間足止めを食らい、シンディはひとり盛大に溜め息をつく。



もう日は傾き、今朝立てた計画は無駄に終わったも同然である。



そしてまた電話のベルが鳴ると、舌打ちしながら乱暴に受話器を取った。



『おや、随分ご機嫌が斜めじゃないか。』



開口一番に聞こえたイギリス英語にシンディは『ごめん』と力なく答えた。



電話の主であるアランが小さく笑う。



『なかなか思い通りに行かなくてイライラしてたの。』



『そのようだね。君にしては珍しい。じゃあ、ひとついい情報をやろう。』



それが何かを聞く前にPCからデータの受信を報せる音が響き、シンディは電話を耳に当てたまま視線を画面へと移した。



『最近オルレアンで神隠しに似た事件が多発しているらしくてね。』


『オルレアンで?…まぁ、確かに治安はいいとは言えないけど…誘拐じゃなくて神隠しなの?』


『ああ、未だ行方不明らしい。容疑者どころか、手掛かりすら皆無…つまり迷宮入りの事件さ。』



その難事件の話を何故アランが自分にするのか…


…嫌な予感がする…



『まさか…アラン…』



『今君の滞在してる街からそう遠くもない場所だ。』



『いやよ。第一そんな時間無いわよ…仕事で来てるんだし…』



『ああ、知ってるよ。確か、仕事で3日と休暇で3日の滞在だったかな?』



『えっ…何で休暇取った事を知って…いえ、そんな事はどうでもいいのよ!私はソフィアに何があったかを…!』



『この依頼は騎士修道会からだ。P2から1人派遣したから彼の補佐を頼みたい。』



騎士修道会の依頼なら派遣されたのはクリスだろうかと一瞬考え、シンディの返答に間が開いてしまった。



『ソフィアの事件とも繋がりがあるかもしれない。…どうだい?無理にとは言わないが…』



アランにそう言われたらもう断われる訳ない。



彼はそれを分かって言っているだけにシンディは悔しくて仕方が無かった。