街灯の灯りがチカチカと消え掛かる路地を抜け、2ブロック先の角を曲がる。



久しぶりに通る道も、意外と覚えているもんだと自分の記憶力を褒めてやりたい。



虎太郎は既に灯りの消えたアンティークショップの脇にある階段を上がり、分厚いスチール製の扉の前で監視カメラに向かって手を振った。



数秒後に大袈裟な程ガチャンガチャンと音を立てて開錠された扉を静かに押し開けて身を滑り込ませた。



『よぉ、ヴァーチュース!』



にぃと口角を上げるロイに彼はジャケットを脱ぎながら『違うよ』と苦笑した。



『もうヴァーチュース(力天使)じゃない。単なる追放者だ。』



『追放者?ハハッ!嘘付くなよ、犯罪者の間違いだろ?』



『…それ、ロイに言われたくないなぁ。』



観測衛星をハッキングした虎太郎が犯罪者なら、キラー衛星までハッキングした彼は重犯罪者である。



おまけにレーザーまでお見舞いしのだから。



当の本人はそんな事気に掛けた様子もなく、どうやらまたワケの解らないプログラムを組んでいるらしい。



虎太郎はフロアをぐるりと一周し、会議室の扉を押し開けた。