アスタロトが現れた事は主であるルキフゲには報告済みである。



ー…別に自分は咎められる様な事はしていない。



だが威圧的なルシファーの視線を受け、それが本当に正しいのかさえ疑わしく思た。



『アスタロトの行動は些か出過ぎだった。…そう思わぬか?』



『…あくまでも私個人の意見ですが…アスタロト様の場合は何やら私情が絡んでいた様でした。はっきり申し上げるなら、その様な行動は慎んで頂かないと今後の志気に影響し兼ねません。』



淡々とした口調で言うマルバスにルシファーは一瞬呆気に取られたようだが、ゲラゲラと笑い出した。



『マルバス!お前、言うようになったな!行動を慎めと…?ハッハッハッ!』



マルバスが『失言でした。』と付け加えると、彼は含み笑いをしながら『気にするな』と立ち上がった。



『引き続き監視役を命じる。』



そしてマルバスのそばを通る時、その足を止めて肩をポンと叩かれた。



強張る彼にルシファーは『期待してる』と囁くとコツコツと足音を響かせて部屋を出て行った。



マルバスは一気に脱力し、額を流れる汗を拭う。



彼にはルシファーが一体何を考えているのか、理解出来なかった。



ー…だが…期待を裏切る訳にはいかない。



それだけは確かだった。