魔界という所は何故こう腹立たしい奴等ばかりなのか。



昔からそうだ…憎しみ合い殺し合う、法も秩序もない。



一説によれば、皇帝であるルシファーの趣味でそうさせているらしかったが、マルバスに言わせればただ腹立たしいだけだった。



『お待ちしておりました、マルバス様。』



謁見の間の扉の前でそう頭を垂れる悪魔にマルバスは『ご苦労』と短く声をかけた。



『あの門番はいつからだ?』



『前門番をマルバス様が手に掛けてしまったので、その後ですかな…』



…そういえばそんな事もあったか。



彼はどうぞと促されるまま謁見の間に足を踏み入れる。



そして玉座の手間まで進むと、そこに居た人物に膝を着いて頭を下げた。



『序列5番、大総裁マルバス…只今戻りました。』



『…待っていた。標的はどうだ?』



『相変わらずです。特に目立った動きはありません。』



マルバスの標的であるベルセルクは仕掛けて来る様な事はなかった。



『…ただ、子供の方は確実に力を付けています。真の覚醒はしていませんが、時間の問題かもしれません。』



『ウリエルの子か…まぁ、良い。まだ我々の敵ではない。…時にマルバス。アスタロトには遭ったか?』



マルバスは一瞬ギクリとしたがルシファーに悟られまいと首を下げたまま『いいえ』と答えた。