彼が上層部からの呼び出しを受けたのは、ベルセルクの監視役を命じられて以来初めてだった。



噂では人間勢が月神アルテミスを討ち、天界はかなり動揺しているとか。



正直そんな話はどうでもよかった。



何処で神が死のうが、自分には関係ないと思っていた。



暗くややきな臭い闇を抜け、宮殿まで来ると門番に行く手を阻まれた。



『何用だ?名を名乗れ。』



『…俺を知らないのか?』



『名を名乗れ!』



彼はふぅ…とため息をつくと門番を睨みながら口をゆっくり開いた。



『…序列5番、大総裁マルバスだ。皇帝に呼ばれた。ここを通してもらいたい。』



『皇帝に…?そんな話は聞いていない。』



『貴様が聞いていようがなかろうが、俺は皇帝に呼ばれたのだ。もし、それでも通さぬと言うなら…』



マルバスは足元に出来た影より剣を抜くと鞘を持ち門番に突きつける。



『…貴様を屍にして通るまでだ。』



門番は一瞬考えてから渋々と退いた。



マルバスはフンッ…と鼻を鳴らし門番を睨みつける。



『72柱くらい覚えておけ。雑魚が!』



苛立つ彼に門番が悔しそうに拳を握る。



マルバスは差して気にせず宮殿へと入って行った。