そんな右京の隣に腰を下ろした忍は「ねぇ…」と彼を覗き込む。




「右京は知ってたの?あの時虎太郎君が居たのを…」




あの時とは他でもないアルテミスとの一件である。



右京は「いや…」と小さく答えた。



「本当に偶然だよ。俺はただ様子を見てただけだよ…衛星を使ってね。」



そう言って彼はその一部始終を語り出した。




ケイを狙っているのが誰なのかは衛星だけではわからなかった。



それがアルテミスであると虎太郎から聞かされた時は、流石の右京も不安を抱かずにはいられなかった。



だが、虎太郎は「撃退する」と言って退けた。



『“撃退”…?あのアルテミスを?』



ついそう呟いてしまった右京にロイはフッ…と笑った。



『クロウ…俺やヒューガがランドサットに目を付けたのにはもう一つ理由があるんだ。』



そう言ってロイはモニターのウィンドウを切り替え、忙しなくキーを叩いていく。



『1から4号機だけハッキングしたのに5号機だけはダミーを入れたのは通常通り作動していると見せかける為。…そう、通常通り…だ。だが、通常通りじゃない使い道がある。』



彼がEnterキーを押すと、画面に赤字で“absolute”という文字が浮かび上がった。



『“absolute”(極秘)…?』



『そう。この5号機だけは裏コードが存在するんだ。元々5号機はNASAが軍事用にと設計してた衛星で、理由は知らないがその計画が途中で破綻した。つまり…』



ロイは得意気に右京を振り返って口角を上げる。




『このランドサット5号機は軍事衛星がベースなのさ。』




右京はそんな彼をただあんぐりと口をあけて見つめ返すだけで、言葉を発する事さえ出来なかった。