虎太郎は愛しい恋人の額にキスを落とすと、彼女が微かに身動ぎする。



『リサ…君は戻ってもいいんだよ?』



ゴシゴシと目を擦るとリサは首を横に振った。



『平気…。ヒューガの傍が一番安心出来るの…』



寝起きのリサは殺人的に可愛い。



『…いつもそのくらい素直でもいいのに…』



堪らず抱き締めて耳元で囁く。



さっきまでの張り詰めた気が氷の様に溶けてしまいそうだ。



彼女の少し冷たい唇を奪い、優しいキスを落とす。



目の前のリサの輪郭を月明かりが照らした。



暫く見つめ合っていた二人だったが、急に虎太郎の表情が厳しくなる。



『ねぇ、リサ…』



『なぁに?』



『月なんて…出てたっけ?』



あるはずがない…何故なら今日は新月なのだから。



故に“月明かり”もあるはずがないのだ。