間一髪ケイが命拾いした忍の話にホッと胸を撫で下ろし、「なら何も心配要らないじゃないか」と言う右京に忍の甲高い怒声が返って来る。



「ざけんじゃないわよ!あんた、自分の子が車に跳ねられそうになったのよ!?何暢気な事抜かしてるワケ!?」



「わ、わかったから落ち着けって!」



耳から携帯を数センチ離して右京は忍を宥めた。



別に心配していない訳ではない。



ただケイが自分の子だからこそ右京には判るのだ…そんな事じゃ、ちょっと躓くのと大差のない事だと。



そして何を言っても今の忍には逆効果だと判断すると、「出来るだけ早く迎えに行く」と告げて電話を切った。




携帯をダランと手にしたまま暫し考え込む。



…遂に仕掛けて来たか…。



『…大変ですね、子供を持つと…』



突然そんな言葉を掛けられ、右京はビクッと身を強張らせた。



声が聞こえた部屋の隅に目を向け、闇の中にキラリと光る瞳を見つけて怪訝そうに眉を寄せる。



もはや誰かと聞くのも馬鹿らしかった。