右京がイギリスに戻ったその日、ロンドンは今年最高の冷え込みを記録した。



右京はダウンの下にモコモコのセーターを着込み、完全防具とも言える服装で職場に現れた。



『お久しぶりです、ボス!』



『おう…寒い…暖房つけろよ…』



『ついてますよ。まだ朝ですし、まぁ昼には多少温かくなりますから…』



『絶対だな!?なんなかったら減俸だぞ!?』



従業員の青年は右京の後ろを歩きながら『はいはい』と適当に返事をしていた。



『早速なんですが、年末に出荷した商品の件で─』



『ストーーーーップ!』



『な、なんですか!?大声出して!』



『………なぁ…俺のデスクは何処だ?』



留守の間に貯まった書類に埋もれ、右京のデスクはもはやデスクではない。



『…発掘隊でも組織しますか?』



『…ああ、出来るならお願いしたいね…』



オーバーに首を竦めた右京の後ろから『Mr.クロサキ』と凛とした声が聞こえて彼は振り返った。