古い寺院や国宝級の建造物…。



その街全体が時代を感じさせる。



趣きがあり、時間ですらゆっくりと流れているような錯覚に陥る…が、黒崎右京はまだ納得がいかなかった。



「早く、早く!」



彼とは逆に、跳び跳ねるように前を歩く愛妻…忍はご機嫌らしい。



「おい!走るな!」



慌てて追いかけて彼女の手を取ると、右京はため息を着いた。



「転んだらどーすんの!?」



「まぁたそれ~?心配し過ぎだよ…」



多少うんざりしたように忍はそう言うが、それでも右京は心配で仕方なかった。



現在妊娠5ヶ月…“安定期”と言うらしいが、右京からしたら何がどう安定してるのか判らない。