目を閉じたイザベラの耳に聞こえて来る雨音があの日を鮮明に思い出させる。



そう…雨が降っていた。



イザベラは案の定頭痛を感じて銀行の出口でこめかみを押さえる。



しかも傘も持っていなかったから、濡れて帰るか、止むまで待つかのどちらかだ。


『…ホント、雨は嫌い…。』



ついていない自分に溜め息を吐いて、彼女はどんよりとした灰色の空を見つめていた。



『あ~降ってるね~…』



不意に隣から聞こえた声に彼女は振り向くと、年輩の男性が立っていた。



『えぇ…天気予報では夜中からって言ってたのに…ついてないですね~』



彼はイザベラの言葉には答えず、ただニッコリと微笑んだ。



暫く二人並んで空を見上げていたが、『君は…』と彼が口を開いた。